教授挨拶

救急医学科

 大学医学部における救急医学講座はそのまま大学病院において救急医学科を構成します。従って、講座の教授、助教授、講師、助手、その他、大学院生らはそのまま病院の救急医学科の相応するスタッフとして働いています。つまり、脳・心臓などに由来する内因性疾患の急性発症で極めて重篤なもの、その他原因不明の意識障害、敗血症などについて、また重度の多発外傷、薬物中毒などの外因性疾患について、救急医学専門医が中心的に活躍しています。一方、平成16年度よりこれらとは別に講師などの教員定員が認められ、これらにより内因性疾患の急性発症に対応する救急総合診療ないし救急内科診療も行うという意義が付加されました。

 
従って、狭義の救急医学科は従来の救急医学講座の陣容で「救命救急医療」に特化した、つまり地域の重症救急患者の“最後の砦”たる救命救急センターでの中核的な役割を担いますが、広義の救急医学科は救急内科の守備範囲を包含し、いわゆる初期・二次救急医療の一部を担っています。この部分は院内では「内科救急E」と称していて、内因性疾患による急性発症が疑われる救急患者に対して救急内科Eのスタッフが初期診療に当たります。名称の由来は、第一内科(呼吸器内科など)、第二内科(消化器内科など)、第三内科(循環器内科など)の各内科学講座が救急患者を扱うに当たり、各々を内科A、同B、同Cと呼んでいることもあり、(救急)内科Eはeducationまたはemergencyを意味するというわけです。初期臨床研修が必修化されるにあたり、救急医療も基礎的なコースに位置付けられ、従って初期・二次・三次救急医療全般が必修の研修対象となりました。このことから、救命救急センター部門と初期・二次救急医療部門とから成る昭和大学病院救急医療センターにおいて救急医療を学ぶ医師が常に数人から10人程度いて、救急医学専門医によって指導されています。

 救命救急センター部門の診療内容は上記に示すようですが、救急内科Eによるものは、いわばER(emergency room)におけるそれです。つまり、初療において必要な治療を行い、引き継ぐ診療科を判断(患者の振り分け、triage)します。これからは初療の守備範囲を内科系に限られず、小児や整形外科などの分野にも広げていくプランを練っています


救命救急センター

 三次救急医療は地域救急医療の“最後の砦”として急性発症した超重症の傷病者の診療に24時間・365日体制で当たっています。診療の中心は救急医学科の救急医学専門医が担当しますが、必要に応じて脳神経外科、循環器内科をはじめ院内全ての診療科が治療に参加します。救急患者は年間に2万数千人に上りますが、この三次救急医療の対象は年に700人余です。

 患者が蘇生室に搬入されるや否や患者の蘇生術・その他が開始されます。外傷患者であれば日本救急医学会ならびに外傷学会が共同で開発した外傷初期診療ガイドライン(JATEC、ジェイエイテックと呼びJapan advanced trauma evaluation and careの略称です)によって“取りこぼし”のない初期診療を行います。例えば、昏睡で運ばれた重症頭部外傷患者は30%程度で頭部以外にも重篤な外傷が合併しているなどがその理由です。常に複数の救急医学専門医が診療の中核的な役割を担い、必要に応じて各科専門医の応援を得ます。救命救急センターで初期臨床研修を行っている若手医師も診療に参加します。

 その後、病棟での治療は集中治療医学という手法に則って行われることが多いので、人工呼吸器、各種モニター、血液浄化装置、人工心肺装置などが駆使されることとなります。脳蘇生に対して低体温療法が行われれば、やはり必要な各種の機器が用いられます。高気圧酸素治療装置も病棟で行うことができます。看護スタッフにも日本看護協会による救急認定看護師がいて、救急入院した重症患者の看護ならびにスタッフの教育・指導に当たっています。また、院内のCCU(coronary care unit、循環器集中治療室)には救命救急センターとして数床の病床が確保されていて、救急医学専門医と循環器内科医が連携して急性心筋梗塞を積極的に受け入れ、やはり専門的な集中治療を展開しています。感染管理の手法やその他院内の多くの知恵が救命救急センターの病棟には動員されているといって過言ではありません。

 最近では救急救命士や一般救急隊員による医療行為などを救急医学専門医が監督する体制が進められていて、これをメディカルコントロール(MC)体制と呼んでいます。救命救急センターのスタッフ医師は、東京消防庁に出向し救急現場に無線による指導(“オンライン”メディカルコントロール)を行ったり、事例から救急隊員らが学ぶことのできる重要な救急症例について事後に検証する作業(“オフライン”メディカルコントロール)に加わったりしています。患者にとって適切に搬送先の選定が行われ、搬送中にも適切に処置されることは大きな関心事のはずです。救命救急センターのスタッフ医師は地域救急医療の質向上のためにこのような方法によっても貢献しています。